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オートクチュールは生き残るのか? ウィズコロナ時代での在り方を考える。

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コロナ禍において、日々の定番スタイルと言えばスウェットのセットアップやスニーカーという人は少なくないはずだ。1月25日より2021年春夏オートクチュールコレクションが開催されるが、 この伝統的な職人技術を誇るファッションの祭典はどうなっていくのか? 今季の注目ブランドの開催スケジュールとともに、ポストコロナ時代に必要な改革を考えていこう。

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オートクチュールの美しいドレスは、膨大な時間をつぎ込み丁寧な手作業を施した職人技の証だ。デザイナーのビジョンを具現化すべく、クチュリエたちがボタンを一つ一つ丹念に成形し、希少な羽毛を布地に縫い込み、グローブの縫い目にフリルを施す──。1月25日より開催される2021年春夏オートクチュールコレクションを直前に控え、各メゾンはどのような準備をしているのだろうか?

コロナ禍におけるファッション界は、ショーの日程、製造工程、ストリートスナップに至るまで、多方面で大きく影響を受けきた。そのなかにおいて、オートクチュールのアトリエはどうにか歩みを止めることなく進み続けてきた。今シーズンは、主要ブランドの多くがバーチャルではあるものの、ショーを行う予定だ。

バレンシアガやジャンポール・ゴルチエが開催延期を発表。

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とは言うものの、今季の開催を見送るブランドもある。オートクチュールの初披露を予定していたデムナ・ヴァザリア率いるバレンシアガ(BALENCIAGA)と、ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)だ。ゴルチエは、2020年春夏シーズンを最後に引退を発表したが、と同時に毎回ゲストデザイナーを迎えて、ゴルチエの美学にある遊び心と華やかさを新たな形で繋いでいくことを約束していた。その記念すべき最初のデザイナーに選ばれたのがサカイ(SACAI)の阿部千登勢だ。本来であれば、両ブランドともに昨年7月に開催される予定であったが、今年7月に延期されることに。ファッション関係者たちが最も楽しみにしていた2大ショーは夏までお預けとなった。

その一方で、心躍る朗報も舞い込んだ。それは、アルベール・エルバスが1月26日に立ち上げる新ブランド「AZ Factory」。彼はWWDの取材に対し、「実はオンライン形式でのショーを開催したいとコロナ以前から思っていたんだ。だって世界はデジタル化しているのだから」と語っている。

さらに、注目すべき2名のデザイナーもデビューを控えている。まずは、これまでのオートクチュールの伝統とは全く異なる定義をもつ、フェンディ(FENDI)のキム・ジョーンズだ。フェンディは1月27日に開催。1965年にカール・ラガーフェルドがはじめてオートクチュールの指揮を執った以来のビッグイベントとなる。ジョーンズが自身のインスタグラムに投稿したパオロ・ロベルシ撮影によるティーザー画像を見ると、フェンディのクラシックなイタリアングラマーのビジョンを退廃的なフェデリコ・フェリーニ風に仕上げていることがわかる。ジョーンズをリスペクトして止まない若いフォロワーたちだけではなく、従来のフェンディを愛用してきたファン層も惹きつける内容になることは確実だ。

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そしてデビューの日程は未定であるものの、ジバンシィ(GIVENCHY)のマシュー・M・ウィリアムズにも期待が寄せられる。ジバンシィの前任者であったクレア・ワイト・ケラーは、プレタポルテにおいてはビジネス的観点に重きを置き、オートクチュールではファッションの創造性を最大限に表現していたのが記憶に新しい。その点においては、ウィリアムズが2020-21年秋冬コレクションで発表した肩を尖らせたオーバーサイズのテーラリングやアクセサリーなどの実用的なアイテムがどのようにオートクチュールのレベルに到達するかは未知数であるが、話題をふりまくことは間違いない。

今、オートクチュールに求められるもの。

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今回のオートクチュールの見どころは、かつてのようなパリの個人邸宅のフロアで優雅に披露されるドレスの繊細なディテールではないかもしれない。それよりも着目すべき点は、各ブランドのデザイナーたちが、このオートクチュールという「浮世離れした不可思議」な存在をどのように再解釈して、どのように人々を惹きつけるのかということだ。

その観点から言えば、ジョーンズとやウィリアムズはいずれも自身のブランドを展開し、Z世代をはじめとする新たなラグジュアリー顧客層が求める服づくりを心得ている。もちろん伝統的なオートクチュールを好む顧客層も一定数は存在するが、商品の“ドロップ”を好むカジュアル志向の消費者を新規顧客として呼び込む余地はないものだろうか? または、双方の両立を目指すべきなのだろうか?

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世界はフーディとスエットパンツで日々過ごす人であふれている。オートクチュールに大金をつぎ込む人々の割合がわずか0.1%であっても──裏地の素材がカシミヤだったとしても──彼らでさえ今はトラックスーツを買うだろう。オートクチュールの顧客層のリアルな要望に応えるのに今ほどふさわしい機会はないのではないか。ジョーンズは、ハイ&ローミックスの達人と呼ばれている。彼が手がけるディオール(DIOR)の2021年フォールコレクションでは、アーティストのケニー・シャーフが描いたマンガ風のイラストが卓越した繊細な技術を用いてボンバージャケットに刺繍されているのだ。

ここ数年、ファッション界のあちこちで大変革が起きている。ジョーンズ以外にも、クレイグ・グリーン、ウェールズ・ボナー、マーティン・ローズといったデザイナーたちの台頭により、メンズウェアは次世代デザイナーが活躍する注目すべき舞台となり、コロナ禍でリアルなショーの開催が不可能となった今、新たな表現の場としてますます注目が集まっている。フィジカルなショーに頼らずともオートクチュールの顧客をつなぎ止め、さらなるファン層を拡大していくために、まずはジョーンズやウィリアムズのようなデザイナーを参考にすべきだろう。

この先、オートクチュール体験を後押しするのは信頼や忠実さだろうか? それともさらなる実験的な試みや、クチュールの販売体制をカジュアルに広げるブランドを容認することなのだろうか? 新しく台頭するデザイナーたちによって、存在意義が再定義されるのか? 時代錯誤になるだろうと何十年も前から危惧されてきたファッション界の浮世離れしたこの一隅が、少なくともアップデートされるのか?

正直なところ、今季のショーを見終わるまではなんとも言い切れないが、ポストコロナ時代の狭間で揺れるオートクチュールの未来に大いに期待したい。

記事の転載元:https://www.vogue.co.jp/fashion/article/what-is-the-future-of-haute-couture-cnihub